現寸検査

 お疲れ様です! 品質管理課の山口です。
 今日は、某物件の「現寸検査」を行いました。

 「現寸検査」というのは、もともとはその名の通り鉄骨の現寸大の図面を現寸場という床全面が黒板になっている部屋に書いて、製作する部材の寸法や、細部の構造、各フロアの上下の間隔などを確認する検査です(「床書き現寸」と言います)。ただ、最近ではCADを使って設計をするため、現寸図を現寸場に床書きして...ということは行いません。
 今ではPCにプロジェクターを接続し、スクリーンにCAD画面を写して、CAD上での寸法チェックを行います(「CAD現寸」と言います)。
 現寸検査には設計監理者、施工管理者(施主様が参加する場合もあります)と鉄骨設計者、鉄骨製作管理者などが参加します。

 現寸検査はまず、テープ合わせからスタートします。これは工場で使用する基準となる鋼製巻き尺と施工現場で使用する規準となる鋼製巻き尺の誤差をチェックするものです。
 使用する鋼製巻き尺はJASS6(建築工事標準仕様書/日本建築学会)でJIS B 7512の1級品と決められていますから、それぞれの巻き尺間でそれほど大きな誤差があることはありませんが、使用年数によっては若干の伸びを生じている場合があります。
 テープ合わせを行う場合は当該巻尺に指定された所定の張力(標準張力)をかけて実施します。
 一般的に使用する鋼製30m巻き尺では標準張力が50Nのものが殆どだと思いますが、10mなどの短いものでは標準張力が20Nのものもあるので注意が必要です。
 標準張力は下の写真のように、巻き尺の基点( 0m )付近に表示されています。
 この時の許容差は設計図書の特記のある場合はそれに従い、特記なき場合はJIS B 7512の長さ標準機との許容差を準用する場合が多いです。これは±(0.2+0.1×L)mm以内(Lは表示長さをメートルで表した数値)で下表のようになります。

表示長さ[m] 5 10 15 20 25 30
許容差[mm] ±0.7 ±1.2 ±1.7 ±2.2 ±2.7 ±3.2

 ちなみに張力の単位「N」はニュートンと読みます。あの万有引力を発見したアイザック・ニュートンにちなみます。
 1Nとは1kgの質量の物体に1m/s2の加速度を生じさせる「力」と定義されています。少し前まで使われていたkgf(キログラム重、キログラムフォース)は1kgの質量の物体に地球の重力加速度である9.8m/s2の加速度を生じさせる力で、9.8N=1kgf です。

 テープ合わせの結果、工場使用と現場使用の巻き尺間に許容差を超える誤差が認められなかった場合(反対に誤差が認められた場合は、巻き尺を交換して再検査をし、誤差のあるものは使用不可とします)、CADによる図面検査へ進みます。

 現寸検査は、製作担当者と設計者と施工者が対面で打合せのできる最初の機会なので、この際に必要な事項(例えば、施工スケジュールの変更有無、受入検査スケジュール、塗装方法など)の確認をすることも重要です。

 かくして、現寸検査の承認が得られて工場製作がスタートすることになります。

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